非対面で顧客との商談の機会を獲得する営業手法の1つとして、近年注目を集めているのがインサイドセールスです。コミュニケーションツールとして電話を使うこともあるという点から、しばしばテレアポと混同されますが、両者の持つ役割やアプローチの方法には違いがあります。
この記事では、インサイドセールスとテレアポの違いについて解説します。インサイドセールスの導入を成功させるためのポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
インサイドセールスとは
まずは、インサイドセールスとテレアポがどのようなものなのか、それぞれ紐解いていきましょう。
インサイドセールスとは、非対面で見込み客にアプローチをかけて商談の機会を獲得する、比較的新しい営業手法です。インサイドセールスで用いるコミュニケーションツールは、主に電話やメール、Web会議ツールなどです。
反対に、対面で行う従来の営業手法は「フィールドセールス」と呼ばれています。インサイドセールスとフィールドセールスは、営業プロセスの中でそれぞれが得意な領域を活かして分業することで、営業活動を効率的に行えるようになります。
テレアポとは
テレアポとは「テレフォンアポインター」の略で、見込み客に対して電話でアプローチをかけて訪問や商談のアポイントを獲得する営業手法です。あらかじめ顧客リストを用意して順番に電話をかけていき、1日に多数の顧客にアプローチする方法が一般的です。
インサイドセールスとテレアポの違い
インサイドセールスとテレアポは、どちらも非対面で見込み客にアプローチをかける営業手法である、という点では共通しています。しかし、目的・アプローチ方法・アプローチ対象・成果指標・活動にかかる時間、といった点で違いがあります。
具体的にどのような違いがあるのか、項目ごとに見ていきましょう。
目的
インサイドセールスとテレアポの最も大きな違いは、営業活動の目的にあります。
インサイドセールスは見込み客との関係を構築し、コミュニケーションを取る中で営業活動に役立つ情報を収集して、その後の成約率を高めることを目的としています。そのため、営業の質を重視し、見込み客を育成するためのアプローチを行います。
一方テレアポは、アポイントの獲得が目的です。アプローチ内容よりも、アポイントの数を重視する傾向があります。
アプローチ方法
アプローチ方法に関しては、インサイドセールスの方が幅広い手段を活用するという違いがあります。
インサイドセールスでは電話だけでなく、メールやチャットツール、Web会議ツール、Webサイトなど複数のツールを活用してアプローチします。顧客によって利用頻度の高いツールが異なるため、相手に合わせてツールを使い分けることで、営業活動がより効果的・効率的なものになります。
テレアポで使われるアプローチ方法は、基本的に電話のみです。インサイドセールスでも電話で営業活動を行うことはありますが、電話に限らずさまざまなアプローチを試みるのが、インサイドセールスの特徴だと言えるでしょう。
アプローチ対象
インサイドセールスでは、見込み客との関係性を構築していく必要があるため、同じ相手に複数回アプローチします。そのため、アプローチ対象は「自社の商品やサービスに興味を持っている人」となります。初めは自社への興味が薄く受注確度が低かったとしても、徐々に関係性を構築することで成約の確度を高めていくのが、インサイドセールスの仕事です。
テレアポでは、展示会などで収集した見込み客の情報リストを用意して、順番に電話をかけていきます。アポイントの獲得が目的であり、架電後の顧客フォローは行いませんので、自社に対して「興味がない」という態度をとられた場合は、アプローチ対象から除外します。
成果指標
インサイドセールスとテレアポでは活動目的が異なりますので、成果の指標とされるものも異なってきます。
インサイドセールスでは商談化数や受注数、受注額といった数値的な指標はもちろん、「顧客のニーズや情報をどれだけ引き出せたか」「効果的な提案ができたか」といった営業の質の面での成果も重視します。
テレアポにおいては、アポ獲得数や架電数、平均処理時間などの分かりやすい数値的な指標を用いる場合が多く、営業の質よりも量を評価軸とするケースが一般的です。
活動にかかる時間
成果が出るまでの営業活動にかかる時間も、インサイドセールスとテレアポで異なる点の1つです。
インサイドセールスは見込み客に対して複数回アプローチし、信頼関係を構築して成約率を高めていくため、長期的な活動が前提となっています。1回のアプローチだけで成約や売上などの成果を求めるのではなく、時間をかけてじっくりと顧客育成に取り組み、長期的な目で見て利益を求めていきます。
テレアポはあらかじめ用意した顧客リストに対して、一斉に電話をかけてアポイント獲得を目指します。インサイドセールスと違って、信頼関係を構築するわけではないため、できるだけ短期間で多くの成果を出すことが求められます。
インサイドセールスとテレアポの向き・不向き
インサイドセールスとテレアポは、どちらが良い・悪いというものではありません。それぞれに適しているケースがありますので、自社で導入するにはどちらが良いのかを見極めましょう。
インサイドセールス導入が向いているケース
インサイドセールスの導入が適しているのは、次のようなケースです。
- 売上や生産性向上を目的とする場合
- 受注数や受注1件あたりのコストをKPIとする場合
- 顧客と長期的な信頼関係を築いていきたい場合
- 中長期的なフォローが必要な商材を扱う場合
テレアポ導入が向いているケース
テレアポの導入が適しているのは、次のようなケースです。
- 架電数やアポイント数を増やすことが目的の場合
- 顧客のニーズを短期間で見極め、ターゲットを絞りたい場合
両方に適したケース
インサイドセールスとテレアポ、どちらにも適しているケースは次の通りです。この条件に当てはまらない場合は、フィールドセールスをはじめとした他の営業手法を取り入れた方が、効率的に成果を上げられる可能性があります。
- 比較的安価で、訴求価値が言語化しやすい(非対面でも説明しやすい)商材を扱う場合
- 高価な商材であっても訴求価値が言語化しやすく、ターゲットとなる顧客の数が多い場合
インサイドセールスが注目されている理由
インサイドセールスは、効率的な営業活動を可能にする新しい営業手法として、近年さまざまな企業が導入しています。
さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響で、顧客と対面するフィールドセールスを行う機会が制限されたことが後押しになり、より一層関心を持たれるようになりました。その具体的な理由としては、次のようなものが挙げられます。
非対面営業が可能
インサイドセールスは電話やWeb会議ツールなどを使用し、非対面での営業活動を行う手法です。新型コロナウイルス感染拡大の影響で対面での営業活動が制限され、非対面でのコミュニケーションが一般的になったことから、非対面営業が可能なインサイドセールスにも注目が集まるようになりました。
人材不足への対策
少子高齢化に伴う人材不足が叫ばれる昨今、営業活動に関しても少人数で効率的に行うことが求められています。インサイドセールスはフィールドセールスと異なり、1件1件客先を訪問する移動時間が必要ないため、少ない人数でも多くの顧客へアプローチすることができます。
営業に関する記録が追跡しやすい
インサイドセールスが行った営業活動は、活動ログとしてデータに残します。そのため、どのような営業を行ったのかが追跡しやすく、進捗状況の管理・共有も容易になります。データを活かせば、見込み客の育成から受注までの過程を数値化して分析することもできますので、売上予測も立てやすくなるでしょう。
営業活動の属人化を避けられる
従来の営業スタイルでは、アプローチのタイミングや方法などの判断は営業担当者一人ひとりに任されているケースが多く、営業活動自体が属人性の高いものになりがちでした。
インサイドセールスでは、顧客とのやり取りを記録して進捗状況を共有するために、判断基準を定めて業務の標準化を行います。これにより、客観的な基準をもとに営業活動を行うことができ、営業活動の属人化を避けられるようになります。
サブスクリプション型ビジネスモデルの拡大
サービスの問い合わせから申し込みまでをWebサイトやチャット、メールなどで完結できるサブスクリプション型ビジネスは、インサイドセールスと相性が良いシステムだと言えます。
このビジネスモデルが近年普及し、シェアを広げているのは、インサイドセールスが注目を集める追い風にもなっています。
インサイドセールス運用のポイント
せっかくインサイドセールスを導入しても、テレアポと同じ運用になってしまうと意味がありません。営業活動を効率化し、成果につなげるための運用のポイントを押さえておきましょう。
アポイント獲得数以外のKPI設定
インサイドセールスのKPI(重要業績評価指標)は、アポイント獲得数以外に設定するとよいでしょう。
インサイドセールスの活動目的は、見込み客との信頼関係構築と成約率の向上を目指すことです。アポイント獲得数も大切ですが、それだけを指標にしてしまうと「アポイントを獲得すればいい」という思考になってしまい、成約につながらないアポが量産されてしまいがちです。
ターゲットを絞る
成約につながるように、顧客の見込み率を高めていくのがインサイドセールスの仕事です。その際に必要なのが、潜在的なニーズを持っている顧客をターゲットにしてアプローチをかけることです。
ニーズを持っていない、ずれた顧客をターゲットにして営業活動を行っても、成約につなげるのは難しいでしょう。戦略を立てて、自社の商材に関心を持つであろう顧客を把握してターゲットを絞り込んでから、アプローチをかけるのでよいでしょう。
顧客情報の管理・共有を行う
インサイドセールスの運用を成功させるには、顧客情報を適切に管理・共有する必要があります。商談につながる相手かどうか、顧客が持つニーズや予算、決定権を持つキーマンは誰かなど、営業活動に必要な情報を継続的に収集して共有します。
こうした顧客情報をリアルタイムに更新して共有することで、顧客の状況にあった情報提供ができるように心がけましょう。
素早いレスポンスを心がける
顧客からの問い合わせや依頼などに対して、できるだけ素早いレスポンスを行うことも大切です。レスポンスが早いと「すぐに対応してくれる」という信頼感を得られ、顧客満足度を高めることが可能になります。
対応が遅くなると、その間に顧客が他社と契約して商談や受注の機会を逃してしまう可能性も考えられます。スピーディーな回答が難しい場合でも、一旦連絡を返してから返答を準備するなど、不安を感じさせない対応を行うべきだと言えるでしょう。
複数コンテンツの利用
インサイドセールスでは、電話だけでなくメールやチャットなども活用します。顧客が普段よく利用するコンテンツに合わせてアプローチできるよう、複数のツールを準備しておくとよいでしょう。
他部門との連携を図る
インサイドセールスは、他部門と連携して最終的な成約を目指します。時には他部門に引き継いだ顧客でも、なかなか成約に結びつかず引き戻しが発生することもあるでしょう。
そういった場合でもスムーズに顧客の育成をし直し、再び引き継いで成約まで結び付けられるよう、日頃からしっかりと他部門との連携を図っておくことが重要です。特に顧客情報や進捗状況の共有は、連携に不可欠です。
ノウハウを共有する
ノウハウの共有・蓄積が行われていれば、インサイドセールスを担当する従業員が誰でも同様のセールスを行えるようになり、属人化が防げます。そのためにはまず、顧客とのやり取りや進捗状況を記録して営業プロセスを可視化し、業務の標準化に取り組むとよいでしょう。
インサイドセールスで活用すべきツール
インサイドセールスを効果的に運用するには、ツールの活用が不可欠です。業務効率化や顧客情報の共有に活用できるツールには、次のようなものがあります。
SFA(営業支援ツール)
SFA(営業支援ツール)は顧客管理や案件管理、営業活動の記録・報告などの機能が備わったツールのことを指します。営業プロセスや進捗状況を可視化し、チーム内での情報共有を行いやすくするツールの1つです。
MA(マーケティングオートメーション)
MA(マーケティングオートメーション)ツールは、マーケティング活動における施策の管理・自動化・効率化を図るツールの総称です。見込み客を管理し、属性ごとにコンテンツを自動配信したり、メールの反応状況やWebサイトの閲覧情報などを収集して行動分析し、見込み度合いを把握することもできます。
MAツールを導入すると、顧客への最適なアプローチを自動で行うことができるようになるため、より効率的に顧客育成を行えるようになります。
CTI(コンピューター電話統合)
CTI(コンピューター電話統合)は、電話機能に顧客管理システムやMAツールを連携させ、業務効率化を図るツールの総称です。受電した際に顧客情報がPC画面上に表示される機能や録音機能、通話時間などのデータ分析機能、着信が偏らないよう電話制御を行う機能などもあります。
主に電話業務の効率化を目的として導入されていますが、トラブル発生時の対応や人材教育、応対品質の向上にも役立てることができるツールです。
ABM(アカウントベースドマーケティング)
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、個人ではなく具体的な企業や団体(アカウント)をターゲットとして行うマーケティングの手法です。BtoBに特化した戦略的なマーケティング方法と言い換えることもできるでしょう。
ABMツールは、蓄積されたデータベースから対象となる企業や団体を分析し、選定するツールです。商材ごとに管理されていた顧客データを、企業単位で管理できるようになるため、ターゲットとなる企業に対して適切なアプローチがしやすくなります。
名刺管理ツール
名刺管理ツールは、紙の名刺をスキャンすることでデータベース化し、保管・管理するツールです。名刺の保管場所に困ることがなく、情報の検索もできるため、見込み客の情報を管理するのに適しています。
また、データ化した情報は社内での共有もスムーズにできるようになります。他部門との連携も図りやすくなるため、社内で統一した名刺管理ツールを導入するとよいでしょう。
Web会議ツール
インサイドセールスでは、電話やメールだけでなくWeb会議ツールを用いた面談を行うこともあります。非対面でも相手の顔を見ながら商談ができるため、今やWeb会議ツールは必須とも言えます。
通話時間の制限がなく、通話音質や通信の安定性に定評があるツールを選ぶと、スムーズでストレスのない商談が実現できるでしょう。
まとめ
インサイドセールスとテレアポは、非対面での営業手法という点では類似していますが、その目的やアプローチ方法は異なります。特にコロナ禍でフィールドセールスが制限され、非対面でのコミュニケーションが一般的になった近年では、インサイドセールスに注目が集まっています。
インサイドセールスを効果的に運用していくためには、目的やアプローチ方法に合わせたツールの活用が不可欠です。今回ご紹介したようなものの他にも、営業活動を効率化するためのツールはいくつかあります。議事録ツールの「AIGIJIROKU」もその1つで、顧客とのやり取りをAIが自動でテキスト化し、ログとして残すことができます。
こうしたツールをうまく活用し、運用のポイントに気を付けながら、今後も需要が高まると考えられるインサイドセールスで業務効率化を図りましょう。
AI GIJIROKU ブログ編集部です。議事録や、会議、音声を中心に生産性を向上するためのブログを執筆しています。